「子どもの可能性をつぶすことになるので、親は子どもの好きなものを否定してはいけません」
育児書やインターネットのコラムでよく目にする一文です。
それについては、私も共感できます。大人でも誰かに好きなものを否定されると、悲しくなりますもんね。
それと似たような話で、
- 子どもの興味があるものを親が苦手なら、子どもも苦手に思ってしまう
- 子どもがそれを嫌っているのは、親のせい
というのもよく聞きます。
それって本当?
それなら、子どもの興味があることや好きなものに対して「それ、本当はお母さん、苦手なんだ」と正直に言うことは、ダメなんでしょうか?
子どもの興味や可能性を奪ってしまう、許されない行為なのでしょうか?
今回は、子どもの興味があることや好きなものに対して、「苦手」「苦痛」という気持ちを隠して、まじめに子どもと向き合っているお母さんへ、
「たとえお母さんがそれを苦手だとしても、子どもも苦手になるとはかぎらないんじゃないかな?」
「苦手であることを子どもに打ち明けて、無理なことは断ってもいいんじゃないかな?」
という私個人の考えをお話ししたいと思います。
私は医者でも心理学者でもない、ただの母親です。
なんのデータも根拠もないお話ではありますが、かつての私と同じように育児のマニュアルやルールに苦しめられているお母さんが少しでも楽になることを願い、このテーマを選びました。
虫が大好きな息子と虫が苦手だった私はどうだったかを振り返りながら、
- 親が苦手なものは、同じように子どもも苦手になるのか
- 親の苦手が伝わることで、子どもの興味を奪うことになるのか
という、よく耳にする育児マニュアル・ルールについて考えてみたいと思います。
ぜひ、気を楽にして読んでみてくださいね♪
虫が苦手な母と虫に興味を持った息子
もうすぐ6歳になる息子は、虫に夢中です。
息子が本格的に虫に興味を持ち始めたのは、2歳のころでした。
公園に行けば延々と虫を探し、2時間ほど経って帰ることを伝えると、毎回号泣して手を焼いていました。
そして、家の中でも1日に何回も虫の絵本を持ってきては「読んでくれ」と要求され、それにできる限り応えてきました。
私自身はというと、虫に興味がなく、それどころか大の苦手でした。
しかし、「子どもの興味があるものを親が嫌いだった場合、子どもも嫌いになってしまうので気をつけましょう」という話を聞いたことがあったので、「お母さんは虫が苦手」ということを隠しながら、息子と接していました。
子どもの興味や成長の機会を奪うことを避けたかったからです。
しかし、いくら大切な我が子のためとはいっても、「ずっと虫、何でもかんでもとにかく虫」という生活は、思った以上に辛いものがありました。
それでも、私は我慢しながら、強制的に虫と接触する日々を過ごしました。
せっかく虫に興味を持ち始めた息子に、「お母さん、本当は虫が嫌いだから見たくも触りたくないんだ」と言うことは許されないことだと思っていたからです。
しかし、ある日、公園でイモムシを楽しそうに持ってきた息子に対して、我慢の限界に達した私はついに禁断の一言を口にします。
「お母さん、本当は虫が苦手なんだ。そのイモムシも怖いから触りたくないんだよ」
息子は虫が好きなままだった
それから、息子がどうなったかというと、虫好きが止まることはなく4年経とうとしています。
私も無理をすることで笑顔でいられないのなら、その方が息子にとってよくないことでは?と考え、禁断の一言を放ったその日からは、嫌なことは「嫌だ」、無理なものは「無理」、苦手な物は「苦手」と正直な気持ちを息子に伝えるようになりました。
すると、育児の心理的負担がグッと軽くなり、少しだけ心に余裕ができました。
イモムシを手に載せて「お母さんも触ってみて♪」と言う息子に対して、「うわ~お母さんはちょっと嫌だな。なんか怖いもん」なんていうと「大丈夫だよ、かわいいよ」と返ってきたりして、私が虫を拒むことで息子が虫を嫌いになることはありませんでした。
「息子は虫が好き」という話を他人にすると、「私が虫が苦手なせいで、子どもは虫に興味を持つことはなかった」とか、「私が虫を怖いと思わなければ・・・」ということをよく言われます。
本当にお母さんのせいなのでしょうか?
少なくとも我が家の場合は、「親が苦手だと子どもも同じように苦手になる」という法則に当てはまることはありませんでした。
たまたま?子どもの気質?その理由については後ほど考えたいと思います
公民館のスタッフに言われた「そんなこと言っちゃダメ」のひとこと
息子は虫の絵本や図鑑も大好きでしたので、本の貸し出しをしている近くの公民館へよく行っていました。
虫の絵本ばかりを抱えてきた息子に、手続きをしてくれる年配のスタッフの方が「虫が好きなんだね」と言いました。
そのあと、そのスタッフの方は私に「お母さんも虫が好きなんですか?」と尋ねました。
「私は虫が苦手なんです」と正直に答えたところ、「そんなこと言っちゃダメ」という言葉が返ってきました。
「どうしてですか?」と静かに聞いた私に、その方は何も答えませんでした。
「そんなこと言っちゃダメ」の真意はよくわかりませんが、おそらく「子どもが好きなことを、お母さんが苦手なんて言ってはダメ」という意味で言ったのではないかと思います。
そのあと、「お母さんは虫が苦手」と打ち明けても、まったく揺らぐことがない息子と手をつないで帰りながら、「そんなに許されないことなのかな」と思いをめぐらせていました。
子どもの興味を奪わない「苦手」の伝え方
私と同じように、「子どもは虫に興味があるけれど自分は苦手」というお母さんはたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
その中には、虫が苦手なことを隠しながら、まじめに子どもと向き合っているお母さんもいらっしゃると思います。
しかし、私自身がそうだったのですが、虫が苦手なことを隠して、または好きなふりをして子どもに合わせていると、少しずつストレスがたまり、いつか爆発します。
私は、お母さんが笑顔でいられないくらいなら、子どもに「苦手」と打ち明けて、無理なことは「できない」と伝えてもいいと思います。
ただでさえ、子育ては我慢の連続ですからね!
ところで、講談社の動く図鑑MOVEのHPで、こんなコラムを見つけました。
「虫嫌いでもいい でも子どもの可能性は奪わないで」親の昆虫嫌いがわが子に与える悪影響を専門家に聞いた
磐田市竜洋昆虫自然観察公園館長の方のお話ですが、「親が虫に対して嫌悪感を抱くと、その子どもは親の顔色を見て虫に対して嫌悪感を抱く」ということが書かれています。これを専門用語で「社会的参照」と呼ぶそうです。
一方で、この方は「親が無理に虫を好きになる必要はない」とも言っています。
「苦手でもいいけれど、幼児は親のリアクションや言葉に影響されやすいことを知って、言動に気をつけてほしい」「好きか嫌いかは子ども自身に決めさせてあげてほしい」ということだそうです。
「厳しい」と感じる方もいるかもしれませんが、虫好きの子どもとの接し方について参考になるコラムです
さて、私が虫が苦手だったのにもかかわらず、虫好き一直線だった息子の話に戻ります。
思い返してみると、息子に「苦手」と伝えるときに気をつけていたことがあります。
それは、最後に必ずポジティブな言葉を付け加えるようにしていたということです。
私は息子に「お母さんは虫が苦手なんだ。だけど、○○くんが好きなら応援するよ」と伝えていました。
この「応援するよ」というポジティブな一言が、息子が虫嫌いにならなかった理由ではないかと思っています。
また、虫を持ってきた息子を見ても、顔いっぱいに嫌な表情を浮かべることがないように気をつけていました。(思わず嫌な顔をしてしまったことももちろんありますが)
その際、「お母さんはその虫ちょっと苦手で触れないんだけど、○○くんは好きなんだね」と肯定する言葉をかけるように心がけていました。
- 虫に対してネガティブな言葉だけでなく、ポジティブな一言も付け加える
- 虫を見てもできるだけ嫌な顔をしない
この2つのおかげで、私が「虫が苦手」と伝えても、息子は虫が大好きなままでいられたのだと思っています。
「子どもの興味があるものを親が苦手なら、子どもも苦手に思ってしまう。子どもの興味を奪わないように」の真の意味は、「子どもが肯定してもらえていると感じるようにしてあげてください」ということではないでしょうか。
きっと、子どもが自身が「ぼく(わたし)は、虫を好きでいても大丈夫なんだ」と思えれば、別にお母さんが虫が苦手なことを隠さなくてもいいし、子どもは虫が好きなままでいられるんだと思います。
完璧にできなくてもOK!
誰にでも苦手なことはある
現在、私は虫嫌いを克服しています。
決して虫を好きになったわけではありませんが、虫を見ても平常心でいられますし、触れるようにもなりました。
息子には「お母さんは虫が苦手だったけど、○○くんのおかげであんまり苦手じゃなくなったよ」と伝えています。
苦手なものがない人なんていませんよね。
私は「お母さんにだって苦手なものがある」と子どもに伝えることは、そんなに悪いことではないと思いますし、親自身が苦手を克服すれば「今は苦手でも、苦手じゃなくなる日が来るかもしれない」ことを子どもに伝えてあげられる、よいきっかけになるかもしれません。
繰り返しになりますが、苦手なことは誰にだってあるし、正直に苦手だと言ってもいいんです。
ただ、自分が苦手だからと言って、子どもの好きなことに対して嫌な顔をしたり、ネガティブな言葉ばかりを言わないように気をつければいいのだと思います。
それは、相手が子どもでも大人でも同じですよね。
散々偉そうなことを言ってきた私ですが、「いや~~~~(涙)」とか「お願いだからそれ逃がしてきて!(気持ち悪いから)」「もう絶対に!虫とり行かないんだから!!(虫はこりごり)」なんて本当に数え切れないくらい言ってきました。
しかし息子は「何言ってんの?お母さん」くらいで全然気にしている様子はありませんでした。
「普段から子どもの考えや意見を頭ごなしに全否定したり、何でも親の思い通りにしようとしていなければ、親の顔色なんか気にせずに我が道を突き進む。そんなに神経質にならなくてもいいんじゃない?」と当時の私に言いたいです。息子が細かいことを気にしないタイプだったということもあるかもしれませんが。
「人それぞれ苦手なことがあるんだな」と息子は学んだと思います。
そして今は「お母さんに虫のすごさをもっと知ってもらわないと!」と言っています。
虫嫌いを克服した私自身の体験談が気になる方は、下の記事も読んでみてくださいね♪
まとめ
今回は「親が苦手なものは子どもも苦手になるのか?」について、私自身の体験を元に考えてみました。
それは、本当のところもあれば、間違っているところもあります。
親が虫が苦手だったとしても、虫に興味を持った子どもの気持ちを傷つけることがないように気をつければ、子どもは気にしません。
しかし、嫌悪感をあらわにしたり、「気持ち悪い」「やめて」というネガティブな言葉ばかりをかけていると、虫が嫌いになるかもしれません。
おそらく、この記事をここまで読んでくれている方は「子どもの興味を奪うことはしたくない」「子どもの好きなものを尊重したい」と思っている方ばかりだと思います。
そのような考え方が根底にあるのならば、大人にはしない言動を子どもにしないように気をつけておけば、それでいいのだと私は思います。
ただでさえ気持ちに余裕がなくなる子育てなんですから、お母さんが無理をしないことが一番です。
「こうしなきゃいけない」「ああしてはダメだ」という子育てルールはほどほどにして、「苦手なものは苦手なんだー!しょうがないじゃん!」と時には開き直りながら、子どもと向き合ってみるのも人間らしくていいのではないでしょうか?